大企業の会社員が「茶摘み体験のコンサル」で脱サラ!独立の理由は日本を救うため?
最終更新日:2023年07月21日
青々とした色が爽やかで、のどかな風景が魅力の茶畑。茶畑が見せる田舎の原風景は、都会や海外の観光客から人気を集めています。
今回取材した丸澤 武さんは、そんな茶畑での茶摘み体験ツアーをコーディネートする人物。もともとは大手企業のトヨタ自動車で働いていましたが、「日本に貢献したい」という想いで脱サラして事業を始めました。
「茶摘み体験ツアーのコンサルタント」という一風変わった事業で独立した丸澤さんに、事業内容や独立の経緯、開業資金、収入、脱サラしたい方へのアドバイスなどを伺いました。
目次
元トヨタ自動車の社員が「茶摘み体験ツアー」のコンサルで脱サラ
コインランドリー運営と、日本に貢献する「観光業」に目をつけ独立
「事業は継続に意味がある」今後はお茶園巡りツアーも開催したい
「逃げの脱サラ」はおすすめしない。会社員と経営者のメリット・デメリット
元トヨタ自動車の社員が「茶摘み体験ツアー」のコンサルで脱サラ
お茶農家と観光客をつなぐことで、「日本を豊かにしたい」と語る丸澤さん。お茶事業がどのように日本へ貢献することにつながるのか、その想いと独立の経緯を詳しく伺いました。
はじめに、どのような仕事をしているのか教えてください。
丸澤さん「1つはお茶に関する仕事です。茶畑で茶摘みしたいお客さんに体験ツアーを提供したり、実際に茶農家さんが作ったお茶を自分のルートで販売したりしています。私は農家ではないので、収穫はしません。コンサルタントのようなものですね。もう1つの事業として、コインランドリーの運営もしています」
最初に始めた事業が、コインランドリーの運営だと聞きました。そもそもなぜ独立したのか、その経緯を知りたいです。
丸澤さん「私はもともとトヨタ自動車に勤めていて、工場建設や商品の企画をしていました。重要な仕事を任されていたという面では上手くいっていましたが、その一方で、自分で事業をやりたいという気持ちも大きかったんです。
大企業で働くと、自分が提案したことが最後まで通るなんてまずありません。それは当たり前のことだと思いつつも、組織で働くことにジレンマを感じていたのも事実です。あとは、歳を取ると気持ちが前向きでも身体がついていかなくなるので、早めにリタイアして好きなことをしたいなと」
コインランドリー運営と、日本に貢献する「観光業」に目をつけ独立
それで、コインランドリー事業で脱サラしたわけですか。
丸澤さん「30代後半のときですね。コインランドリーは絶対にやりたかった事業ではありませんでしたが、人件費不要で参入しやすかったのが理由です。洗濯機や乾燥機、さらに工事費用などで開業資金は900万円ほど。自己資金は運営資金に回して、ほとんど政策金融公庫から借りました」
900万円かかるんですね。事業は最初から上手くいきましたか。
丸澤さん「上手くいきましたね。私は自分が所有しているアパートを事務所として使っており、テナント料が0円なのが大きいです。ただ、行列ができるコインランドリーなんてまずないですよね。そんなに儲かる事業ではないので、コインランドリーを主な事業にするのはおすすめしません」
なるほど…。それでコインランドリーから、なぜ全く異業種のお茶事業を始めたのかが気になります。
丸澤さん「まず私の想いとして、少子高齢化などの影響による危機感と閉塞感を日本に対して感じていたんです。そこで自分が何をできるか考えたときに、海外に物やサービスを売って外資を稼ぐか、観光客に来てもらってお金を稼ぐかのどちらかだなと思いました。それで、外国人に日本でお金を落としてもらうなら、観光業が良いと思ったのがきっかけです」
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観光庁審議官のきっかけで「お茶摘み体験ツアー」をスタート
確かに日本の茶畑は外国人に喜ばれそうです。
丸澤さん「元上司に「観光に関係する仕事がしたい」と相談したら、観光庁の審議官を紹介してくれたんです。そうしたら、その審議官の方が「丸澤さんはお茶の産地の狭山にお住まいなんですね。それなら、その地域でNPOをやっている人を紹介しますよ」と言ってくれて。
実際にNPOの人たちに会ったらお茶農家を5件くらい紹介してくれたので、そこから体験ツアーやお茶の販売を始めることになりました」
観光庁の審議官とは、すごい人を紹介してもらったんですね。
ただ、お茶摘み体験というと、ほかの地域の農家もすでに自分で始めていそうなイメージがありますが。
丸澤さん「すでにやっている農家もいますが、プログラム化しているところはありません。
例えばうちのツアーでは、学校みたいに1時間目、2時間目、3時間目と分けて、簡単に済ませたい人は1時間目と2時間目だけ。最後まで体験したい人は5時間目までいるようにして、どのお茶屋さんでいつ体験できるのかをWebサイトにも全部載せました。
ここまでやっている地域は、ほかにないと思います」
なるほど。丸澤さんがもともとお茶にあまり詳しくなかったのが、逆に新鮮な視点でビジネスを見れたのかもしれませんね。
丸澤さん「そうですね。お茶屋の人たちはいつも茶畑を見ているので、こんな場所の何が面白いの?と思っているんです。ですが、都会に住んでいる方にとって、この光景は感動もの。一般人の目とお茶屋の人たちの目は違うので、そこを繋ぐ仕事ができていると感じています」
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お茶事業は大がかりなプロモーション…開業資金と収入は?
開業資金について教えてください。
丸澤さん「200万円くらいでした。コインランドリーのように店舗を構えているわけではなく、単純に仕入れて売るだけですから。Webサイトを作るのに制作費用が多少かかりましたが、大きなお金が必要だったわけではないです」
実際に開業後、お茶事業は1年目から上手くいきましたか。
丸澤さん「それが上手くいったかどうかの評価が難しくて、この事業は言ってしまえばかなり大がかりなプロモーションなんです。お茶摘み体験で莫大な収益を上げるのは無理ですが、お茶に興味を持ってもらったり、お茶屋さんに行ってもらったりする機会にはなる。
お茶に興味を持ってくれる人を増やして、トータルで収益を上げていくというモデルですね」
なるほど…。現在、どのくらいの売り上げが立っているんでしょうか。
丸澤さん「都内のレストランやカフェ向け、通販などで300万円くらいです。ただ、私の手元にはほとんど残らないので、お茶で生計を立てているわけではありません。先ほどお伝えしたアパートの家賃収入が唯一の収入源ですね」
家賃収入はどのくらいあるのか気になります。また、最も収入が高かったのはやはりトヨタ自動車時代でしょうか。
丸澤さん「家賃収入は500~600万円ですかね。トヨタ自動車で働いていたときの最高年収は2,000万円でした」
「事業は継続に意味がある」今後はお茶園巡りツアーも開催したい
トヨタ自動車時代に高収入だったのなら、今でもたくさん稼ぎたいと思うのでは。
丸澤さん「事業は継続することに価値があるので、継続しようと思ったらやはりそれだけのお金が必要です。ですから、事業を継続するのに必要なお金は、しっかりと稼ぎたいと思っています。自分自身に「儲けたい」という気持ちがあるわけではないですが、事業を継続し拡大するためには必要なことなのかなと」
事業を大きくするためにも、たくさん稼ぎたいということですね。
丸澤さん「そのためにも、多くの人が日本茶の理解を深めてくれ、日本茶を生活の中に取り入れてくれるための働きかけをしたいです。
あとは、日本に来てくれる海外の人たちが茶摘み体験をしてくれるのは大きなチャンスだとも思っているんです。日本茶を「素晴らしい」と言ってくれたら、そこから海外向けに販売する販路も出てくるので」
なるほど。ちなみに、丸澤さんがこれからほかにやってみたい事業があれば知りたいです。
丸澤さん「観光に関わる事業をさらに拡げたいですね。例えばヨーロッパによくあるワイナリーツアーのような感じで、お茶園巡りツアーを開くなど。そのためには資格を持ったツアーコンダクターも必要なので、少し時間をかけて考えようかなと思っています」
「逃げの脱サラ」はおすすめしない。会社員と経営者のメリット・デメリット
会社員の良かったところ、悪かったところなどあれば教えてください。
丸澤さん「会社員は基本的にクビになることがないので、安定しているのが良いところです。逆に悪いところは、自分の力で1から100まで完結するのが難しいところですね。
社内の調整など無駄なことに時間を取られて、じっくりと考える時間がないのが特に大企業のデメリットだと思います」
それでは脱サラの良いところ、悪いところは何だと思いますか。
丸澤さん「良いところは、やはり自分のやりたいことに挑戦できることですね。私は農家の生まれでもないし、農業に携わったこともない。そんな私が茶畑を見ると「農業を大切にしよう」と思えるようにもなりましたから。
悪いところは、安定感がないこと。例えば会社員の場合は、ケガをしたら厚生年金などもありますよね。それに、自分で考えて自分で動かないと儲けがなくなってしまうので、とにかく毎日が目まぐるしいです」
それぞれ良い面もあれば悪い面もあるということですね。ありがとうございます。
それでは最後に、これから脱サラしたい方へアドバイスをお願いします。
丸澤さん「脱サラする理由が「上司と顔を合わせたくない」や「今の仕事が嫌だ」などなら、やめたほうが良いです。目的や想いを持たずに脱サラをした人は、1個何か上手くいかなかっただけですぐに挫けてしまいますから。
脱サラをしたいと思ったら「自分はなぜ脱サラしたいのがしっかりと突き詰めてほしい」というのが私からのメッセージです」
公開日:2023年07月21日