整形外科の開業に欠かせない!必要な資金や手順、失敗事例などをまとめてご紹介
最終更新日:2024年09月20日
整形外科医として働いているなかで、自由度や需要の高さから開業医を目指したいと考える方も多いです。ですが、実際に整形外科クリニックを開業するとなると、何から準備を始めれば良いのかや何に気をつけるべきなのか分からないという場合がほとんどでしょう。
そこで今回は、整形外科を開業するにあたって必要な資金や手順などの情報をまとめてご紹介します。整形外科の定義や将来性、開業するベストなタイミング(年齢)など基本的な情報や整形外科の開業でよくある失敗事例と失敗させないためのコツなども解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
整形外科の開業前に知っておきたいこと
整形外科を開業する前には、知っておくべき情報がいくつかあります。こちらでは、整形外科とは何かという基本的なことをはじめ、開業に最適な年齢、整形外科の現状と将来性、そして実際の開業方法を解説するので、しっかり確認していきましょう。
整形外科とは?形成外科や整骨院との違い
整形外科は、骨や関節、筋肉、神経などの疾患を診断し治療する医療分野です。
整形外科と混同してしまいがちな分野に形成外科や整骨院がありますが、形成外科は外傷や疾患で損傷した身体を修復・改善する分野で、整骨院(接骨院)は主に骨折や脱臼の治療、リハビリテーションなどを行います。
整形外科と形成外科や整骨院の違いは、治療領域です。
整形外科は運動機能の改善を目的とした治療を行う一方で、形成外科は見た目の改善を目的とした治療を行います。また、整骨院は骨を扱うという共通点はありますが医療機関ではないため、整骨院で診断したり手術したりはできません。医師の診断のもと柔道整復師が施術を行うのが整骨院なのです。
整形外科の開業にベストな年齢は?
では、整形外科の開業に踏み切るはどのくらいの年齢がベストなのでしょうか。
一般的に、医師が独立開業する年齢は35~45歳くらいが適齢期と言われています。なぜなら、医師としての経験や知識は開業の成功に大きく影響するとされており、この時期であれば医師として一定の水準に達して患者からの信頼も得やすいからです。
ただし、年齢だけでなく経済的な準備や市場の状況も開業の成功に大きな影響を与えます。また、最近では30代前半の若手医師や定年前のベテラン医師も独立開業への意欲が高いという調査結果もあるため、適齢期と言われている年齢にこだわり過ぎる必要はないでしょう。
整形外科の現状と将来性
日本では、高齢化をはじめスポーツ障害・外傷などの増加、労働災害や交通事故の多発などを背景に整形外科領域の疾患が増えており、今後も需要拡大が予測されています。
現に、厚生労働省の「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」および「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」によると、整形外科医の数は22,520人(医師全体の7.0%)、整形外科を標榜する診療所は全国に12,439施設(全体の12.1%)あることが分かっています。
一方で、開業する地域によっては競合が激化するケースもあるので、整形外科を開業するには適切なタイミングや場所の見極め、そして事前の準備が重要になってくるでしょう。
参照:令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 | 厚生労働省
参照:令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況 | 厚生労働省
整形外科の開業方法
整形外科を開業するための方法はさまざまで、
- 一戸建てで開業する(購入または賃貸)
- ビルのテナントで開業する
- 既存のクリニックを引き継いで開業する(承継)
などがあります。
それぞれのメリットとデメリットがあるので、開業する地域や場所、費用、自身のライフスタイルなどによって最適な方法を選ぶようにしましょう。
たとえば、一戸建てで開業すれば一から理想の整形外科クリニックを作ることができますが、初期費用は大きくなる可能性が高いです。ビルのテナントであれば一戸建てより初期費用を抑えられますが、契約内容によっては制約が多く自由度は低くなります。
既存のクリニックを引き継ぐ方法であれば大幅な初期費用削減になるほか、既存のスタッフや患者も引き継げるというメリットも。ただし、既存の施設を利用していくことで改装や医療機器の入れ換えなどが理想通りにできない可能性があること、事業承継をする上での課題やトラブルを考慮する必要があることなどがデメリットです。
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整形外科の開業に必要な資金
整形外科を開業するためには、大きな費用が必要です。
ここでは、開業資金(初期費用)と運営資金について解説します。
開業資金(初期費用)
整形外科の開業に必要な初期費用は、土地や建物の購入費または物件を借りる費用をはじめ、内外装工事費、医療機器や設備の導入費、医薬品の購入費、システムの導入費、人件費、広告宣伝費などがあります。
それぞれの項目にかかる費用は条件によって異なりますが、テナントでの開業の場合は8,000万円程度、一戸建てで整形外科を開業するなら1億円を超える規模になることが一般的です。
運営資金
整形外科の開業後も継続的に必要となる運営資金には、賃料や人件費、水道光熱費、医薬品の購入費、広告宣伝費などが含まれます。
運営資金においても初期費用と同様に開業する場所やクリニックの規模などによって大きく変動しますが、毎月数百万円は見積もっておくと良いでしょう。ある程度のスタッフ数が必要で専門職も多く抱える整形外科では、特に人件費率が高めです。人件費率の目安とされている25~35%を基準に、計画的な採用や適切な人員配置などを行う必要があります。
また、医療機器をレンタルしたり、電力使用量を抑える工夫をしたりなども運営資金を抑える方法として有効です。
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整形外科は儲かる?開業後の年収目安
整形外科を開業する上で、果たして儲かるかどうかを気にされている方も多いでしょう。
厚生労働省の「第23回医療経済実態調査の報告(令和3年実施)」によると、整形外科の開業医の平均年収は約2,487万円。勤務医の場合は約1,300万円であるという調査結果もあることから、整形外科の開業は儲かる可能性が高いと言えます。
整形外科の収入は、診療報酬や自由診療、健康診断などから得られる仕組みです。ただし、年収は開業地域や診療内容、患者数などによって大きく変動します。
開業後の年収を増やすためには、自由診療の導入や専門的な診療項目を設けることなどが有効です。特に、地域によっては必要とされる治療が異なるので、地域のニーズを的確に捉えてニーズを満たすような診療を提供することが重要となります。
また、医師自身が専門的な知識を持って丁寧な診療を行うことはもちろん、スタッフの教育、職場環境や設備の整備など整形外科クリニック全体の質を高める努力も、年収を増やしていくために欠かせない要素でしょう。
参照:第23回医療経済実態調査の報告(令和3年実施) | 厚生労働省
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整形外科の開業手順
整形外科を開業するための計画や準備が不十分だと、想定外の事態に見舞われて困難な道のりになってしまう危険性も。そこでここからは、整形外科の開業手順について具体的に解説していきます。
1.診療方針やコンセプトの決定
診療方針やビジネスコンセプトを決定することは、整形外科の開業において重要な最初のステップです。
ターゲットとする患者層や地域のニーズ、競合他社との差別化、手術の有無などを考慮し、独自の診療スタイルを形成することが求められます。
たとえば、地域に高齢者が多ければリハビリテーションに力を入れ、若者が多い地域ではスポーツ外傷などに対する治療を提供することで地域のニーズを満たし、開業初期からの患者獲得につなげることが可能です。
診療方針やコンセプトが明確であればあるほど、開業後の成功率を高めることができるので慎重に取り組みましょう。
2.施設基準や人員配置など条件の確認
次に、整形外科の開業に必要な施設基準や人員配置を確認します。
これらの条件を把握することで、クリニックの面積や設備、患者1人あたりの待合室の面積などの施設基準を満たす物件を探したり、医師や看護師、リハビリテーションスタッフなど必要な人員を確保するための計画を立てたりと、整形外科の開業計画をより具体的に進めることが可能です。
診療の内容によって必要なスペースや設備、人員が異なるだけでなく、以降の準備にも大きく影響するので、診療方針やコンセプトが決まったら早めに確認するようにしましょう。
3.立地や物件の決定
次は、整形外科を開業する立地や物件を決定します。
整形外科の開業場所を選ぶ際には人口密度やアクセス性、周辺施設などがポイントです。集客数をはじめ、患者の通いやすさやリピート率に大きく影響するので慎重に検討します。
また、物件選択の際には広さやレイアウト、価格などを考慮しましょう。レイアウトはクリニックの運営効率や患者の利便性に直結し、広さと価格は経営の安定に影響します。
4.資金の調達
先述したように、整形外科の開業には大きな資金が必要です。
資金調達方法には自己資金で賄う以外に、金融機関からの融資や医療機関向けの公的融資などがあります。たとえば、金融機関であれば都市銀行や地方銀行、信用金庫、日本政策金融公庫などが、医療機関向けであれば福祉医療機構が候補として挙げられるでしょう。
それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、自身の経済状況や整形外科の開業計画に合った方法を選ぶことが重要です。
5.内外装工事や医療機器購入
整形外科の内外装工事と医療機器の購入は、患者に与える印象や診療の質に大きく影響します。
効率性や安全性、耐久性を考えた、最適な内装や医療機器を選ぶようにしましょう。
また、医療機器は初期費用だけでなく、メンテナンスやトラブル対応のコストも考慮して選ぶことが大事です。
6.申請・届出
整形外科の開業には、以下のような申請・届出が必要です。
- 診療所開設届
- 保険医療機関申請
「診療所開設届」は医師が診療所を新たに開設する際に必須の届出で、開設後10日以内に提出する必要があります。窓口は整形外科を開業する地域を管轄する保健所です。
また、「保険医療機関申請」は公的医療保険の適用を受けるための申請で、窓口は開業地域を管轄する地方厚生(支)局の事務所となっています。
整形外科を開業するための申請・届出の手続きは複雑で時間がかかるので、事前に必要な書類や手続きの流れを確認し、計画的に進めることが重要です。
7.採用
整形外科では医師だけでなく、看護師やリハビリテーションスタッフ、受付スタッフなど、さまざまな職種の人材が必要となります。
適切な人員配置を実現するためには採用プロセスを理解し、各職種の役割と必要なスキルを明確にすることが重要です。また、福利厚生の充実を図るなどスタッフの離職防止策も考えておくことで、長期的に安定したクリニック運営が可能となります。
8.集客
整形外科の成功は集客力が大きく影響するので、開業前から効果的なマーケティング手法とプロモーション戦略を用いてクリニックの知名度を上げ、新規患者を増やすことが必要です。
開業後の集客も見据えて、顧客体験の改善や口コミの促進など、リピート患者を増やす戦略も考えておきましょう。
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整形外科の開業における失敗事例
整形外科の開業は大きな成功をもたらすチャンスがありますが、失敗のリスクがあるのも事実です。
こちらでは、整形外科の開業における具体的な失敗事例を取り上げ、それぞれの事例から考えられる対策について深く掘り下げていきます。
地域との連携が図れていない
地域との連携は、整形外科開業の成功にとって必要不可欠な要素です。地域のほかの医療機関や施設との良好な関係は、地域の医療ニーズを的確に把握することや患者数の確保につながります。
この地域との連携がうまく構築できないと、患者さんのニーズに対応するための情報が十分に得られず、さらにほかの医療機関からの紹介もほとんどない状態で売り上げが確保できずに経営が破綻してしまうケースも珍しくありません。
地域との連携を図るためにはまず、開業前に地域の医療機関や関連施設を訪問して自身の整形外科クリニック開業の意向を伝えましょう。また、開業後も定期的に情報交換や共同の研修会などを通じて持続的な関係構築に努めることが大事だと言えます。
効果的な集客施策が打てていない
次に紹介する整形外科の開業でよくある失敗例は、効果的な集客施策が打てていないというケースです。
集客はクリニックの経営において重要な役割を果たします。戦略的に集客施策を打つことで新規の患者を獲得し、クリニックの収益を確保することが大事ですが、これが上手くいかないと患者数はどんどん減少して経営の継続は困難になりかねません。
たとえば、広告やWebサイトを全く利用せず口コミだけで集客するという集客施策をとったことで地域に新しく開業した事を広く周知できず、十分な患者数を獲得できない状態に陥るという失敗例もあります。
効果的な集客施策を打つためには、まずターゲットとなる患者層を明確に定義しましょう。そして、その患者層が情報を得るために利用しているメディアやプラットフォームで積極的に広告を掲載するなどして、整形外科クリニックの認知度を上げることが必要です。また、SEO対策を施したWebサイトの構築やSNSを活用した情報発信も有効だと言えます。
患者数の確保より経営を優先してしまう
患者数の確保と経営のバランスも、整形外科の開業において重要なポイントの一つです。
何より患者さんに寄り添い、患者数の確保に努めることが大事な整形外科が経営優先で進めてしまうと顧客満足度やサービスの質の低下につながり、最終的に経営を続けていくことが難しくなる可能性があります。
先ほどご紹介したように効果的な集客施策を積極的に打つことをはじめ、患者数の確保のために時間をつくれるように専門的な知識を持った会計士やコンサルタントの支援を受けることも検討してみてください。
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整形外科の開業を失敗させないためのコツ
整形外科の開業を失敗させないためには、多くの要素に注意を払う必要があります。
開業前に押さえておきたいコツを5つご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
来院しやすい場所・環境で開業する
整形外科を開業する場所や環境は、医療機関の成功にとって非常に重要な要素です。
交通の便が良く、周囲に高齢者が多い地域であるなど、来院しやすい環境を選ぶことで多くの患者が定期的に通院することが可能となります。
具体的には公共交通機関からのアクセスの良さや駐車場の数、バリアフリー設計などを考慮して選ぶようにしましょう。ショッピングセンターや高齢者住宅付近、広い敷地が確保しやすい郊外などもおすすめです。
無駄な設備投資を避け、ヒトに投資する
整形外科を開業する際、初期費用の大部分は設備や機器に消えてしまうことが多いですが、医師やスタッフの教育、トレーニングに投資することも長期的な成功に必要不可欠です。
医師やスタッフがいないと成り立たないビジネスなので、無駄な設備投資で初期負担を増大させて運営に支障をきたすことがないように機器の一部をレンタルしてその分をスタッフ教育や経営改善に活用するなど、「ヒト」を一番に考えた行動を心がけましょう。
顧客層に合った機器を導入する
整形外科を開業する地域の顧客層を理解し、そのニーズに合った機器や設備を導入することは、診療の質を高めて患者の満足度を向上させる重要な要素です。
具体的には、患者の年齢層や地域の生活習慣、共通の疾患パターンなどを調査します。たとえば、スポーツ関連の外傷が多い地域であれば関節リハビリテーション機器を導入するといった具体的なアプローチがあります。
自由診療を取り入れる
公的医療保険だけに依存するのではなく、自由診療を取り入れることも整形外科の開業を失敗させないためのコツです。
自由診療とは公的な医療保険や適用されない治療のこと。基本的に3割負担となる公的な医療保険とは異なり、患者さんが全額負担する治療です。
自由診療を取り入れることで医療機関の収益源を多角化することができ、患者さんにも選択肢を提供することができます。自由診療を取り入れる際には、自身の専門知識やスキル、地域のニーズを踏まえてどの診療を自由診療として提供するかを考えることが重要です。
土曜・夜間診療を検討する
土曜や夜間の診療を提供することで、働き盛りの患者さんや時間が取りづらい患者さんに対してもサービスを提供することが可能です。
これは患者さんの満足度向上につながるだけでなく、開業する整形外科クリニックの競争力強化にもつながります。ただし、スタッフの勤務時間や労働環境も考慮する必要があるので注意しましょう。
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医療系ビジネスはフランチャイズ開業もおすすめ
特に専門的な知識やスキルが必要となる医療系のビジネスは、全てを一から始めるのは難易度が高いかもしれません。そこで、おすすめなのが既存のビジネスモデルやノウハウを基に独立開業ができるフランチャイズです。
最後に医療系でおすすめのフランチャイズをご紹介します。
からだ元気治療院
『からだ元気治療院』は、訪問鍼灸マッサージサービスを手掛けるフランチャイズ本部です。
低資金・低リスクで開業できるビジネスモデルを確立しており、5年で直営売上高10倍を実現したノウハウの提供によってオーナーを成功へと導きます。店舗訪問指導や医療保険申請の手伝いなど本部サポートも充実しているので、未経験者でも開業可能です。
ふれディア
『ふれディア』は、地域に根差した訪問医療マッサージビジネスを展開しているフランチャイズ本部です。
独自の「療養費立替システム」の導入をはじめ、手厚い本部サポートも大きな強み。資格を持っていなくても月商200万円を目指すことができます。
整形外科開業のまとめ
整形外科の開業は大変な挑戦ではありますが、適切な戦略を立てて準備を行えば成功への道を切り開くことが可能です。地域社会への貢献や患者の健康と満足度の向上、そして自身の医療への情熱を追求するためにぜひ挑戦してみてください。
また、整形外科の開業を失敗させないためには、
- 開業場所や環境の選択
- 賢い設備投資と人材投資
- 顧客層に合った機器の導入
- 自由診療の導入
- 土曜・夜間診療の提供
などさまざまな要素が必要です。
これら全てを一度に実行するのは容易ではないため、フランチャイズに加盟して開業することも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
ご自身の状況と目指すべき方向性を明確にして、最適な選択をしましょう。
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整形外科の開業に関する記事
公開日:2023年06月22日